お茶の香りのパイロット

そして、白ドールの数を減らしながら時を経て、ついにフィアの出産の日がやってきた。

お昼すぎから陣痛がきて、フィアとルイリードは息子の出産へと臨んだ。


アルミスは立ち会うのに、ルイリードの助手として助産師と看護師の資格を持っていた女性スタッフを２名連れてきた。


「フィア、久しぶり・・・がんばるんだよ。」


「アルミス・・・ありが・・うっ・・・はあはあ・・・ひぃ・・・がんばるから。」


ルイリードは助手２人にお礼をいいながら、サポートを頼んでいた。


「アルミス、ありがとな。俺ひとりで、長時間かかるようだったら正直、ずっと立っていられるか不安だったんだ。
手馴れた２人がきてくれて本当に助かるよ。」


「黒き翼も白衣を着るとすっかり医者だね。
遠い記憶だけど・・・父さんの後ろ姿を思い出すよ。」


「親父に似てるか？バカ言え・・・まあ・・・うれしいけどな。」



そうしているうちに、助産師のサポートでフィアは安産で男の子を産むことができた。


「さすが、フィアだ・・・。元気な男の子だぞ。俺たちの息子だ！」


「兄さん、彼の名はルイフィスだ。俺たち３人の息子だ。」


「ルイフィス・・・ありがとう、アルミス。
かなり安直な気もするが・・・うれしいよ。

でもいいのか？俺の名が一番乗りで。」


「いいんだよ。俺はルイにバックアップを頼むんだからな。」


「そうか・・・小さなルイに伝えられることはすべて伝えなきゃな・・・。」





小さなルイが生まれた日・・・・・ルイリードは倒れた。


フィアが入院中の間、アルミスがルイリードの看病をかって出たのだが、ルイリードは意識がとぎれとぎれになってベッドから離れられない状態になった。


（兄さん・・・我が子のために、かなりの力を使ってしまったんだね。

すごいよ、自分の息子の誕生を自分で迎えにいくなんてさ。

それにしても悔しいなぁ・・・実の母親の呪縛でみんなを救えないでいたなんて。

記憶を失うこともなく、魔力を封印されることもなかったら、今頃きっと人々は平和な町や村にしっかり根を張って元気に笑顔で生きていたんだろうに。）



アルミスはルイリードが眠っていることを確認すると、基地の様子をナオヤにきくために電話をかけに別室へと行った。


１５分ほどしてルイリードのベッドルームにもどってみると、そこにはもうルイリードの姿はなかった。



「に・・・いさ・・・ん。ルイ！・・・ルイリードぉ！！！返事してくれっ。」



すると、裏山からセイリールが空へと飛びだったのが見えた。


「だめだよ・・・兄さん・・・。今、決戦なんてしたら・・・。」




アルミスはすぐにナオヤに連絡をいれて、アフィニをよこすように命令し、ルイリードの行先を調べるのだった。



ルイリードを乗せたセイリールは白ドールの親機が製造されているウィウス第一工場へと向かった。


「セイ、ここが俺の最後の仕事場だ。
派手に暴れまくろうな。」


「ラジャ。・・・ルイ、私もルイとともに逝かなくていいのか？
私はいつまでもルイとともにありたい。」


「ありがとな。けど、おまえにはまだ任務があるんだ。
ラーガと合体して、セイラーガになって、アルミスと俺の息子。そしてフィアの未来を導くという大仕事が残っているんだ。

俺とともにいったん痛い目にあわせてしまうと思うが、アルミスがおまえをパワーアップさせて復帰させてくれるから、心配はいらないと思う。
だから、行こう、相棒。工場にあるドールとそれにかかわる親ロボすべてをぶっ壊すんだ！」



「ラジャ。ともに行こう・・・ルイリード・セイ・リランティル！
私の勇者。ルイの魂を神のもとへと導こう。」