お茶の香りのパイロット
ナオヤやワガンは新しいアルミスの能力に驚きながら、セイラーガを見てぶるっと震えた。


「な、なな・・なんだよ。面白いビジョンって。
ここにいると何だか、背筋が寒くなる感覚があるんだけど・・・。」


「アーティラスが苦しんでいる。
ルイリード本人が死んで、私が魔力開放してここにセイラーガができあがったら、アーティラスの肉体が拒絶反応をしているようなんだ。」


「それは現実に起こっていることなのですか?
とても興味深いです・・・僕の宝石にもセイラーガの反応がびしびし伝わってきています。

それにしても・・・なんか隙がなさすぎるというか・・・ナオヤさんのいうとおり恐怖を感じますね。」


「ああ、それはまだ・・・部品が欠けているからなんです。」



「部品ですか?どんな部品なのです?」


「ルイフィス・・・なんだ。」



「何っ!!?どうして赤ん坊が部品??どういうことだ?
ルイフィスも同乗させるっつーのか?」


「そうです。それがルイの指示だし。
ルイフィスの持つ魔力の愛情がなければ、このロボットはただの大量破壊殺人兵器でしかありません。」


「ルイリードは生前どんな研究をしてたってんだよ!
とんでもねえもの考えていたんだなぁ。」


「ええ・・・でもすばらしいです。
自分の作り上げたものが殺しばかりの殺人兵器になってしまわないように、命をかけて我が子へと望みをたくしたのだから。

ふふっ・・・アーティラスをたたくのは近いうちにできそうですね。

体がつらくなる予測はしていなかったようですね。」



「しかし・・・そんなだとあせってドールの生産と破壊活動も熾烈になるかもしれないですね。
ルイリードが死を前にあせったように・・・アーティラスもまた自分の目的をつらぬいてくるかも!」


「そうですね。それはさせてはならない!
彼は、各国を復興させることはせず、首脳になり得る人物をすべて殺していっています。
大陸すべての人間を力でねじふせて、自分が王になろうと考えているのかもしれません。」



「そんなこと・・・でも人を消してしまっては、支配しても満たされないんじゃないですか?」


「彼はそうではないんですよ。
彼は・・・普通の人以上にかまわれて育って、常に人の中で流れに身を任せるばかりで生きてきたのです。

自分に意思はあってもそれは誰もかなえてはくれない。
まるで人形のように、大人が彼のすべてを決めてしまい毎日が過ぎていくんです。

だから、彼は人が嫌いです。
思い通りにするには、人がいないことが前提です。
支配するとかしないとかはどうでもよいことで、心のままにすることや心の平穏というのは彼にとっては無の場所にこそあると思っているように思います。」


「なんということだ・・・。
アルミスのお母さんは彼をどう扱ってきたんですか?」


「見て見ぬフリです。自分が贅沢な生活をして、楽しければ私たちなどどうでもよかった母だから。

ルイは逆に見ないでくれたからこそ、医者になれて父さんに近づけてうれしかったと言っていましたがね。」



「いずれも家庭の香りがしないんですね。
それはうちでも似たようなところはあるかな。
けど・・・アーティラスの行動は止めないと!」


「ああ。でも・・・まだ・・・まだルイフィスがしゃべらないから・・・時間が・・・。」


「そうか・・・魔力の源は言葉でしたね。」


「いっそのこと魔法でぱぱっと10才くらいに成長でもできればいいのに。なんて・・・」


「それだっ!」


「えっ?」


「魔法で10才になってもらうんだ。そうすれば戦える。」


「そんなことできちゃうんですか?そんな魔法あるんですか?」


「セイラーガの能力とフィアに力を貸してもらえば、長時間は無理だが、30分程度なら可能だと思う。」


「戦闘時間は30分以内か・・・。もし、それを超えて戦うとどうなります?」


「暴走して破壊の限りをつくすかも・・・。私が抑えきれなかったら死ぬかもしれないし。」


ナオヤとワガンとアルミスは過去にやったことのない実験を実戦でやるしかないと顔を見合わせた。
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