お茶の香りのパイロット
アーティラスはアルミスの話にまったく耳を貸さなかった。

目の中にはギラギラとした恨みの炎だけが燃えている。



(記憶も消えてる?・・・ルイリードから体を奪ったから、アーティラスの本質ももぎとられてしまったということなのか・・・。)


「パパ、気をつけて。パパの体が取られちゃう。」


「ルイ!」



気がつけばアーティラスの機体はもう背後まで接近してきていた。


「止まれ、止まれ止まれ!!アーヴォンス。」



「なんだ、アーヴォンス、なぜ動かない。
首を斬りおとせ!アルミスを捕まえるのだ。」



「捕まってたまるものか。ルイ、そのまま1秒保ってくれ!
フィア、アーヴォンスの弱点はどこだ?」


「コクピットのすぐ下。首の部分よ。
そこに魔力用の機器があるわ。」



「わかった。はぁぁぁぁあああ!」


ガシャーーーーーン!!!バチバチバチバチ・・・・ギギギギ



「うわぁああああああ!くそっ、使えん機体め。」


往生際の悪いアーティラスは脱出すると、王宮の門の前で結界を展開する魔法を放った。


「くそっ、後少しだったのに!
このままじゃ、残り6分でルイの姿がもどってしまう。」


「門を壊せばいいんだよ。お城はまあるい機械がいっぱいあるでしょ。」


「丸い機械?アルミス、それは魔力の増幅器じゃないかしら。
アーティラスの体は弱っていたんでしょ。だとしたら・・・」


「わかった。いくぞ、セイラーガ、門柱をすべて壊してしまうんだ!
ミサイル連続発射、レーザー照射!」



パリーン、パリーン、ガシャーン、ガシャーン・・・!


白い煙が次々に立ち上ると、消えたはずのアーティラスと側近数名の姿が王宮の右端通路へと走っていた。


「ワガン、後ろを援護してくれ。」


「了解、アルミス様まっすぐ行ってください。」


「よし、アーティラス、ここで鬼ごっこは終わりだ。」


セイラーガは大きな弓矢を取り出して、アーティラスへと矢を放った。

矢は蒼白い光を放ちながら王宮の通路へと突き立った。



「こ、これは・・・なんだと、魔力封じの矢か。うわっ、溶ける!俺の体が液体に・・・!
やめろ、やめてくれ。
待て、俺の体!溶けるな・・・なくなってしまう。わぁあああーーーー助けてっ!父さん!!」



アーティラスは通路の石畳のシミとなってしまった。


そしてまもなく、ルイフィスは2才児へともどった。



「パパ、パパ・・・かえりゅ。」


「そうだな。お家へ帰ろう。
みんな、無事か?」


「お疲れ、アルミス。」


「あれ、ナオヤどうしてここに?

リンダにカイウまでいるじゃないか・・・どうして。」


「おまえは戦うのに必死で気がつかなかったんだろうけど、俺たちだっておまえさんの身を案じてだなぁ・・・ディッドとヤーガンに乗り込んできてたんだよ。

これから王宮殿の人たちを保護するよ。」


「ありがとう。悪いけど・・・私は疲れたんで帰還させてもらうよ。」


「ずっと魔力を使いっぱなしだったんですから、ご家族皆さんでお休みください。
王宮内の残った武装や兵士はディーナと移動警察に手伝ってもらって処分しますから。」


「頼むよ・・・ワガン。君のサポートのおかげでアーティラスを逃亡させなくて済んだ。
ありがとう。」



そう、ワガンとの通信を終えたアルミスは、眠らずにはいられない程の体力の消耗をしていた。

ルイフィスもスヤスヤと熟睡している。


フィアはルイフィスの頭をなで、アルミスの頬にふれて、つぶやいた。


「ほんとにお疲れさまでした。私の王子様たち・・・。

ママは帰還までのパイロットをするわね。そして帰ったら、栄養たっぷりのシチューをごちそうするわ。」


< 59 / 60 >

この作品をシェア

pagetop