世界で一番、ずるい恋。






どんな最悪なタイミングだろう。

立った瞬間にやって来るなんて、ついてないとしか言いようがない。




「ほら阿波も座れよー?」




普通に接してくる先生。

いつものように、私たち生徒に向ける笑顔を浮かべる。


昨日のあの時、先生はどんな風に笑ってたんだろう。


こうやって私に接する態度を見ていると、昨日は嘘だったんじゃないかって思えてくる。



せっかく先生が気をつかってくれてるんだから、ラッキーって思えばいいのに。


それなのに、胸の中に何だか黒い感情が疼く。




「あーなみ?」



なかなか座らない私にもう一度先生は呼びかけたけど、私はチラリと視線だけを向けて何も言わずそのまま座った。




「……茜?」




どうしたのとでも言いたそうな陽果の声が聞こえた。


先生の声に煩わしそうな態度を取る。

好きな人に対して、こんな態度を取る。


昨日までの私からは考えられないもんね。






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