世界で一番、ずるい恋。
だけどもう自分でもよく分からないの。
だって昨日と今日じゃ、私の世界はあまりに変わりすぎた。
頭も体も心も、何一つついてこないの。
もう少しだけそっとしておいて欲しい。
今はまだ誰とも話したくないし、誰にも話したくない。
先生が教科書のページを指定しているのを聞かずに、私は視線をグラウンドに向けた。
どこかのクラスの男子がサッカーをしているのをぼんやりと眺めながら頭では違うことを考える。
……そう言えば、先生はまだ知らないんだったな。
私が、先生の " 秘密 " を知ってしまったことを。
余計なことに首を突っ込んで私を怒らせた、それしか思ってないんだよね。
だから、あんな態度がとれて、あんな風に笑ってられるんだ。
そのとき、ふと脳裏を過ったいつかの記憶。
教室を出るときに、見たこともないような優しい笑みを浮かべた。
あれは、きっと恋那ちゃんに向けられたものだったんだ。