世界で一番、ずるい恋。




「いや、違うけど」

「だったら、場所を変えて話しませんか?例えばーー社会科教室とか」





意外とすんなり出てきた数学準備室というワード。

もっと、胸が痛むかと思った。


あの場所に行けば、きっと辛いのに。



たった一日限定の幸せだった空間。

初めて見る先生の表情に、貰った二つの苺ミルク。


大切な思い出になるはずだったあの場所は、次の日には私を奈落の底へと突き落とした。




「……ああ、分かった」





だけどあの場所に行けば、きっといまだに少しだけ揺らぐ心も覚悟を決められると思うから。

本当に嫌われる覚悟が出来ると思うから。




難しい顔をしながら、ゆっくりと頷いた先生を見ながら、言うことを聞かない心に必死に言い聞かせてた。




ーー特別が良いんでしょ?

この罪悪感も震える体も、きっとすぐに慣れて何てこともなくなるはずだから。







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