世界で一番、ずるい恋。

そこまで言って、辛そうに苦しそうに唇を噛み締めた麻野。

ほんとに阿波のことが大切なんだなって伝わってくる。



そんな彼女を見てると、嘘だと、阿波が言うことは全部あいつの勘違いだと言いたくなる。


でもーー。




「あぁ、事実だ」





俺がここで嘘をついたって何の意味もない。

第一、麻野だって分かってるんだから。


あの阿波が何の確証もなく、あんなことを言うわけがないって。


そんなことはきっと、誰よりも阿波の近くにいた彼女が一番よく分かってるんだろうから。





「知ってたなら…何でよ」

「………え？」




突然変わった声色に、向けられた矛先に思わず戸惑う。

麻野の目は真っ直ぐ俺に向けられていて。



こんな風な視線を送られることに慣れていないから、どうすれば良いか分からない。

まず、彼女の言いたいことが分からない……いや、ほんとは分かる。


矢野の彼女のことを知ってたなら、どうして。





「茜を止めてくれなかったのよ……っ！」