世界で一番、ずるい恋。
今まで、阿波たちにバレないように声を潜めながら話してたのに麻野が突然、声を荒げる。
バレる、そう思ってパッと阿波たちの方に視線を向ける。
「あれ、いねぇ…」
だけど、さっきまで確かにそこにいたはずの二人が今はもういなかった。
「ほんとだ…。でも、これでコソコソ話す必要もなくなった。ねえ、千堂くん。知ってたなら何で勉強会、止めてくれなかったのよ!?」
何で、阿波を止めなかったか。
理由なんて簡単だ。
「茜が先生を好きなこと知ってたんでしょ!?もし、勉強なんて教えてもらいに行かなかったら…きっと茜はあんなこと…っ!」
そこまで叫ぶと、力が抜けたように膝から崩れ落ちた。
「おいっ!」
そんな麻野を咄嗟に支える。
腕の中の彼女は、震えていて何だか昨日の阿波を思い出させた。
「分かってるの…本当は。千堂くんを責めるのは違うって。だって、こんなこと予測できるわけ無いんだから…」