世界で一番、ずるい恋。
きっと、彼女が憎いのは俺じゃなくて自分自身なんだろうなって思った。
どうして、こいつも阿波もそんなに真っ直ぐなんだろう。
矢野が好きで好きで仕方がなくて、あまりにも想いすぎて自分を見失ってる阿波。
そんな阿波を止められなかった、助けになれなかった自分を恨む麻野。
なのに、俺はどうしてこんなにもーー真っ黒なんだろう。
矢野に彼女がいることを俺が知ったとき、阿波も知れば良いと思った。
知って、傷付けば良いと思った。
そして、そのまま矢野のことなんて好きじゃなくなれば良いと思った。
でも、阿波がどれだけ矢野のことを想ってたかっていうことを忘れてた。
どうしてだろう。
……図書室から矢野を見続ける彼女を、俺も同じようにずっと見てたのに。
「……私、何やってるんだろう」
" 親友、失格だ " そう言った麻野の頬を伝った涙を、綺麗だと思った。
世の中に、こんな綺麗な涙なんて存在するんだな。