世界で一番、ずるい恋。



きっと、彼女が憎いのは俺じゃなくて自分自身なんだろうなって思った。

どうして、こいつも阿波もそんなに真っ直ぐなんだろう。




矢野が好きで好きで仕方がなくて、あまりにも想いすぎて自分を見失ってる阿波。

そんな阿波を止められなかった、助けになれなかった自分を恨む麻野。


なのに、俺はどうしてこんなにもーー真っ黒なんだろう。




矢野に彼女がいることを俺が知ったとき、阿波も知れば良いと思った。

知って、傷付けば良いと思った。

そして、そのまま矢野のことなんて好きじゃなくなれば良いと思った。




でも、阿波がどれだけ矢野のことを想ってたかっていうことを忘れてた。


どうしてだろう。

……図書室から矢野を見続ける彼女を、俺も同じようにずっと見てたのに。





「……私、何やってるんだろう」





" 親友、失格だ " そう言った麻野の頬を伝った涙を、綺麗だと思った。

世の中に、こんな綺麗な涙なんて存在するんだな。





< 120 / 264 >

この作品をシェア

pagetop