世界で一番、ずるい恋。



ただのバカップルだと思ったのに、まさか片方が教師だなんてあり得ないだろ。


しかも、よりによって矢野だなんて、どうなってるんだよ。

だってどう見たって、ただの生徒と先生じゃないだろ、あの雰囲気は。


……面倒なもん見ちまったな、なんて思ったのと同時にこれを知ったら阿波はどんな顔をするんだろうと思った。



嬉しそうに切なそうに、毎日窓からこの男を眺める彼女は、一体何を思うんだろうって思った。




「おかしいよ、違う。違うって絶対に…」





一人ぼんやりと数日前のことを思い出していた俺を引き戻したのは、いまだに俺の腕の中で震え、泣き続ける麻野だった。



違う、違う。


そう言いながら、ひたすら首を横に降っている。

阿波に対するショックで壊れたか?




「あの女が矢野先生を好きなんて、有り得ないよ…っ」





全くと言っていいほど仲良くない麻野にかける言葉なんて見つからず、ただ様子を眺めていると、突然そんな理解に苦しむことを言ったんだ。






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