世界で一番、ずるい恋。



そう言って少しだけ表情を曇らせた彼女に違和感を感じた。




「陽果こそ何かーー」

「おい、阿波、麻野。私語は慎め」




担任に注意されて、聞きかけた言葉を飲み込んで前を向く。

……私は何も言わないくせに、自分には何でも言って欲しいなんて、わがままだよね。




「おい、お前ら高校生活最後の文化祭だぞ?誰か委員やりたいやつはいないのかよ?」




困ったように、教室を見渡しながら問いかける担任。

だけど誰もが曖昧に微笑むだけで手をあげる人なんていない。



…だって、面倒だよね文化祭委員。

部活に入ってる人は三年だから最後の大会に向けて必死で、放課後が潰れることなんてしないし。

帰宅部は、早く帰りたい。

正確には一秒でも早く学校から出たい。




「おい、お前ら~」

「あーもう、私やります」




このままじゃ煩いし、くじ引きなんてことにもなりかねない。

忙しくした方が少しは気が紛れると思うし、良いよ……私がやるよ。







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