世界で一番、ずるい恋。
「…ねえ、千堂くん」
「………ふっ」
酷い、笑い事じゃないのに。
図書室で行われる文化祭委員、向かい側の席に座る千堂くんの足をテーブルの下で蹴った。
三年の私たちは一番後ろなので、この程度なら周りに気付かれたり怒られたりすることは無いと思う。
「今年の文化祭の担当は俺、矢野だ。みんな、頑張ろうな」
一体今日はどれだけついてないんだろう。
文化祭委員なんて、本当立候補しなきゃ良かったと生徒たちの前で話す先生を見て心底そう思った。
…有り得ない。
そんなことを思ってると、千堂くんはついさっき配られたプリントにシャーペンで何やら書き始めた。
首を傾げてると、それはすぐに私の方への差し出された。
" 良かったな。大好きな矢野と一緒で "
……大好き、の部分がえらく大きく強調されてるのは気のせいかな?
この間詳しいことは知らないけど、先生のことで泣いてたことを知ってるはずなのに千堂くんは意地が悪い。
" 千堂くんなんて、嫌い "
そう書いて私はまた彼にプリントを戻した。