世界で一番、ずるい恋。
「…な、に?」
すると、さっきのプリントを叩いて示した千堂くん。
よく見ると新しい文字が書かれている。
えっと……。
手繰り寄せて、眼を凝らす。
「……えっ、」
そこに書かれた文字を読んだ瞬間、思わず声が漏れた。
口元を覆った右手は、微かに震えていた。
ーー " 脅すの手伝ってやろうか? "
まさか、そう思って視線をあげ、千堂くんを見る。
だけど彼は穏やかな顔で、もう一度数学準備室
と先生を交互に指した。
……なんで、どうして。
そう思うのに言葉が出てこない。
頭が体が、本当に凍ってしまったかのように動かない。
いつバレたんだろう。
どうしてバレたんだろう。
そしてどうして千堂くんは、手伝うなんて言うのだろう。
どれだけ考えても答えなんて出るはずなんてなくて、私は彼を見つめるしかなかった。
ねえ、千堂くん。
貴方は何をどこまで知ってて、何を思って、何をしようとしてるの?