世界で一番、ずるい恋。
違うか?と首を傾げる千堂くん。
自分だってついさっきまで阿波って呼んでたのに、理解できない。
「何で、名前で呼ぶ必要があるの?」
「だってさ、お前……分かってる?」
呆れたように問い掛けてきた千堂くんは、さっきまで座っていた椅子に腰掛ける。
すると、ぽんぽんとテーブルを叩いて私にも触れと合図をする。
「分かってるって、何を?」
仕方がなく向かい側の席に座りながら、聞き返した。
そんな私の態度に、はあぁぁと長い溜め息をついて頭を抱える千堂くん。
え、そんなに絶望されることを言った覚えは無いんですけど……。
「知ってる?お前のやってることってドラマや漫画とかだと、矢野のことが大好きなやつがすることなわけ、逆恨みで」
「えぇ、あ……うん」
「だから、脅し損ねたときとか、矢野が本当にピンチになったときに、お前が矢野のこと好きだってバレたら厄介なの」
「……ん?」