世界で一番、ずるい恋。
確かに先生だけが男じゃない。
でもね、先生じゃなきゃダメなの。
先生じゃなきゃ、嫌なの。
それは、どうしようもないの。
「ごめんね陽果。それに、律は私が何やってるか知ってるのに、私なんかと付き合うわけないじゃん」
どう考えたって私みたいな女、嫌でしょ。
陽果だって、こんな友達は嫌でしょ?
いらない、って思わない?
今は寂しくても、すぐに慣れるよ。
大丈夫だよ、きっと。
だから、その手を離して…?
「茜の、バカ……」
「うん、私はバカだよ」
小さな、か細い彼女の声にしっかりと答える。
迷いはないってことを伝えるために。
「……茜は、なにも分かってないよ」
その言葉は今までの、どんな言葉よりもはっきりと私に届いた。
冷たくて、どこか切なさを含んだその声は、泣き叫ばれるよりも、鋭く私の胸に突き刺さった。
ゆっくりと、袖を掴む力が緩んで、手が離れた。
私は逃げるように、その場を走り去ったーー。