世界で一番、ずるい恋。
近付いて、そっと腕を掴む。
「もう、行こう?」
早く数学準備室に行こうよ。
これ以上、大切な人たちが傷付けあうのは見てられないよ。
それに、そこに行けば、二人を苦しめるものが分かるんでしょ?
ちゃんと、受け止めるから。
大丈夫だよ。
どんな現実も、受け止めてみせるから。
だから私のせいでこれ以上……やめてよ。
「そうだな…行くか」
私を見ずに、ぎこちなく笑ってそう言うと、背を向けて歩き始めた。
クラスメート達が慌てて動き、道を作る。
私は未だに、唇を噛む陽果を気にしながらも、律を追いかけた。
何が待ってるか分からなくて怖いけど、逃げるわけにはいかない。
だって無関係の二人がこんなにも傷付いてるんだもん。
私が逃げるなんてこと、許されるわけがない。
ごめん…二人とも、本当にごめんね。