世界で一番、ずるい恋。





ーーガラッ。

何の迷いもなく律がドアを開けると、中にいた人物が慌てて振り返った。




「千堂に……阿波」





少し驚いたように、そう言った先生。


あれ、先生は私たちが来ること知らなかったのかな?




「夏休みの…答えを聞きに来たのか?」




この話し方からも分かるように、やっぱり先生は知らなかったみたいだ。



……夏休みの、答え。

公言するのかどうか、先生の中ではもう決まってるのかな。

聞きたいような、聞きたくないような、微妙なところが本音。




「……夏休み?」





その出来事を知らない律は先生の言葉が理解できず、聞き返す。

その声は低く、どこかイラついているように感じる。



先生を前にすると、律は纏う雰囲気が変わる。

別人のようになって、怖いとさえ思ってしまう。



それだけ彼が以前言っていたように、先生のことを嫌いだからなのかな。



そこまで律が先生を嫌う理由は、そこまで先生が嫌われる理由は、一体何なんだろう。







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