世界で一番、ずるい恋。




腹が立つ。


何で私には分からないことばかりなのに、自分が少しでも分からないことがあるとそれを感情のままにぶつけてくるの?

そんな律の態度に無性にイライラする。


隣から視線は感じるけど私は気付かないふりをして、先生に話し続ける。




「恋那ちゃんと付き合ってること、公言するの、しないの、どっち?」





はっきりしない、中途半端な先生もイライラする。

そんな、困った瞳を向けないで。

そんな風に見られたって、やめてなんてあげないよ。




「俺は……っ」





ーーバンッ!


ようやく口を開いた先生の声は、勢いよく開いたドアの音に掻き消された。




「恋、那…」




慌てて振り返った先にいた彼女を先生が呼んだ。

そこには、少しだけ笑みを浮かべた恋那ちゃんが立っていた。


だけど、どうしてだろう。

……その笑顔に妙な胸騒ぎを覚えるのは。


今朝、律が恋那ちゃんを連れてくるって言ってたから、彼女は律に言われてこの場に来たんだと思う。








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