世界で一番、ずるい恋。
まさかの行動に、思わず言葉を失った。
先生も行き場を無くした手を、ただ見つめてる。
ーー『気安く触らないでくれる?』
とても彼氏に向けたとは思えない恋那ちゃんの言葉が、ぐるぐる頭の中を回る。
私には背を向けてるから、今、恋那ちゃんがどんな顔をしてるのか分からない。
「……れ、んな…」
「てか、その呼び捨てやめてくれない?」
動揺する先生をバッサリと切り捨てる、容赦のない言葉。
これは、本当に…恋那ちゃん?
信じられなくて律の方に目を向けると、静かに二人のようすを見つめていた。
……動揺している様子はない。
「あはは、" 信じられない " って顔してるね。ウケるんだけど」
響く高らかな笑い声。
私も先生も、目の前の現状が理解できず、言葉を発することができない。
だから、恋那ちゃんが喋るのを待つことしかできない。
だけど……何を言うのか予測も出来ないせいで、怖い。