世界で一番、ずるい恋。




まさかの行動に、思わず言葉を失った。

先生も行き場を無くした手を、ただ見つめてる。


ーー『気安く触らないでくれる?』


とても彼氏に向けたとは思えない恋那ちゃんの言葉が、ぐるぐる頭の中を回る。



私には背を向けてるから、今、恋那ちゃんがどんな顔をしてるのか分からない。




「……れ、んな…」

「てか、その呼び捨てやめてくれない?」





動揺する先生をバッサリと切り捨てる、容赦のない言葉。


これは、本当に…恋那ちゃん?

信じられなくて律の方に目を向けると、静かに二人のようすを見つめていた。

……動揺している様子はない。




「あはは、" 信じられない " って顔してるね。ウケるんだけど」




響く高らかな笑い声。

私も先生も、目の前の現状が理解できず、言葉を発することができない。


だから、恋那ちゃんが喋るのを待つことしかできない。


だけど……何を言うのか予測も出来ないせいで、怖い。







< 203 / 264 >

この作品をシェア

pagetop