世界で一番、ずるい恋。
「触られたくないのも、呼び捨てが嫌なのも、理由はひとつだけ。簡単なことよ?」
恋那ちゃんが一歩、先生に近付く。
先生は動けず、じっと恋那ちゃんを見つめてる。
ドクン、ドクンと心臓が嫌な音をたてる。
嫌な汗が背筋を伝う。
始業式の今日は部活をやってるところはほとんど無く、生徒は帰ってしまったせいで静かな校舎が私の中の恐怖を大きくする。
「ーー嫌いだから。……ほら、簡単でしょ?」
そう言って、ふふっと恋那ちゃんは笑った。
パッと見、いつもと何も変わりない、天使のような笑顔で、確かに笑ったんだ。
分からない、分からないよ。
何がおかしいのかも、彼女の言葉の意味も。
いいや……分かりたくもない。
現実味がないのか、私のなかには何の感情も芽生えてこない。
本当に、ただ、ただ、彼女の言う意味が分からない。