世界で一番、ずるい恋。


初恋じゃないのに、どうしてこんなに身動きが取れないんだろう。


何もしなきゃ振り向いてもらえないことなんて知ってるのに、分かってるはずなのに。



あーあ。

何で、先生なんか好きになっちゃったんだろう。


ううん、違う。

どうして貴方は、先生だったんだろうね。


そうじゃなかったら、先生が先生じゃなかったら。そしたらもっと楽でいられたはずなのに。


アピールもこんなに悩まなくても出来たはずなのに。

友達との恋バナも聞くだけじゃなくて、私も出来たはずなのに。


ほんとに、何で先生なんだろう。


……なんて、幼い頃に見た恋愛悲劇のような台詞が頭に浮かぶ。


だって、きっと、私は先生が生徒でも、好きになった。

出会うことが出来たなら、絶対に、好きになったもん。



だけど、そんなの、今更すぎる。

馬鹿げた思いを振り切るように、数学準備室から視線を逸らして、私は両腕に顔を埋めた。






< 22 / 264 >

この作品をシェア

pagetop