世界で一番、ずるい恋。
初恋じゃないのに、どうしてこんなに身動きが取れないんだろう。
何もしなきゃ振り向いてもらえないことなんて知ってるのに、分かってるはずなのに。
あーあ。
何で、先生なんか好きになっちゃったんだろう。
ううん、違う。
どうして貴方は、先生だったんだろうね。
そうじゃなかったら、先生が先生じゃなかったら。そしたらもっと楽でいられたはずなのに。
アピールもこんなに悩まなくても出来たはずなのに。
友達との恋バナも聞くだけじゃなくて、私も出来たはずなのに。
ほんとに、何で先生なんだろう。
……なんて、幼い頃に見た恋愛悲劇のような台詞が頭に浮かぶ。
だって、きっと、私は先生が生徒でも、好きになった。
出会うことが出来たなら、絶対に、好きになったもん。
だけど、そんなの、今更すぎる。
馬鹿げた思いを振り切るように、数学準備室から視線を逸らして、私は両腕に顔を埋めた。