世界で一番、ずるい恋。
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「なぁ、何時までそうしてるつもりだよ。夜中までか、夜明けまでか?」
「んん……?」
呆れたような、でもどこか優しさを含む声が私をゆらりと現実へと引き戻す。
働かない頭を動かそうと、とりあえず目を開けると、私の視界いっぱいに広がった金色。
……綺麗。
何を思うよりも先に、その美しさに手を伸ばした。
だけどその手は何にも触れずに、強い力によって掴まれた。
瞬きを繰り返し、視界がはっきりしてきた私の瞳に映ったのは、明らかに不機嫌そうな顔をした千堂くん。
そこで私が綺麗だと思ったのは彼の髪だったんだと気付く。
「おい、阿波」
「……っ!」
普段より少しだけ低い声で名前を呼ばれて、冷静さを取り戻すと眠気なんて一気に醒めた。
わ、私、今何しようとしてた……!?
勢いよく起き上がると、ガタンと椅子が大きな音を立てて、私を掴む手が驚きで揺れた。