世界で一番、ずるい恋。
「明日はついに卒業式か……」
感慨深そうに、先生が呟いた。
正直、進学する大学が決まった今もまだ実感が湧かない。
叶えたい夢があるわけじゃない。
でも大学でそれを見つけたって遅くはないと思った私は、少しでも可能性の幅を広げるために最初に考えていた大学よりも少しランクを上げた。
未来が不安なわけじゃない。
ただ、少しだけ思い残すことがあるだけ。
時々、思うの。
……私はこのまま卒業していいんだろうかって。
今の気持ちのままでいて、明日心置きなく卒業なんて出来るのかなって、不安になるの。
「なあ、阿波?」
「ん……?」
「明日、卒業式の後、少しだけ会えないか?」
少しだけ緊張したような声に、返事をすることが出来ずに黙る。
それはきっと、会いたい理由が何となく予測できてしまったからだと思う。
いくら鈍い私でも、気付いてた。
ーー先生の気持ちが、確実に自分へと傾いていることに。