世界で一番、ずるい恋。
私の横を通り過ぎる律。
伸ばした手は、彼を掴めなかった。
……だって私、今更分かったよ。
こんな状況になって、やっと分かったよ。
「……私も、私も…っ」
ーー律、貴方が好きでした。
いいや、大好きです。
自分でも気付かないうちに私は、心を奪われていた。
だけど、もう遅い。
振り返っても金髪のあの人は人混みに埋もれてもう見つからない。
第一、昨日の時点で私は先生を選んだんだ。
律を好きだと伝える資格なんて、ないよ。
……気づくのが、あまりに遅すぎたんだ。
ーー『三年間、ずっと好きでした』
ずっと想ってくれてたのに、私は最後まで律に何も返せなかった。
今更、気付きたくなんてなかった……っ。
いつから私は、こんなにも律のことが好きになっていたんだろう。
ーー三月一日。
ようやく気付いた恋心は、咲く場所すら見つけられず、散った。