世界で一番、ずるい恋。



でも、別にそれだけが理由な訳じゃない。




「数学だけは昔からダメなの」




こればっかりはどうしようもない。

どれだけ勉強しようと思っても、いまいち分からなくて。


そしたらやっぱり、得意な教科を勉強してしまって数学は手付かずじまい。



そのくせ、授業中は先生ばっかりに目が行っちゃって授業どころじゃなくて。

そんなことを繰り返して、出来るようになるわけがない。


この間の数学の点数なんて、思い出したくもない。




「……だったらさ、昼休みとか放課後に矢野に教えてもらったら良いんじゃね?」

「え……?」

「こんなとこから見つめてねーで、図書委員の仕事がねぇ時には質問に行けば良いじゃん」





そう言った千堂くんはピッと人差し指で数学準備室を指差した。


……何で思い付かなかったんだろう。



そしたら学習意欲のある生徒として良いように先生の目に映るじゃん。

そんなことをしたって成績が上がるとは思えないけど、正直そんなことはどうでも良い。


先生の近くにいれる、それだけで幸せだから。




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