世界で一番、ずるい恋。
「図書委員も今日で終わりだし、月曜から矢野のとこ行ってこいよ」
「そう、だね……」
行動しなきゃ、何も始まらないよね。
想ってるだけじゃ何も変わらないよね。
それじゃなくてもこの恋は、普通なら何も起きることのない、一方的な片思いで呆気なく終わるもの。
それなら、行動するしかない。
「そういや、今日も矢野見えなかったぞ」
思い出したように、千堂くんが私にその事実を告げる。
……先生、今日も見えなかったんだ。
そんなに忙しいのかな?
だったら私が行ったら、迷惑なんじゃないかな?
ううん、ダメ。そんな消極的じゃダメ。
勢いよく首を横に振って弱い自分を追い払う。
ーー決心しないと、強くならないとダメ。
そう強く思って私は数学準備室を見つめた。
「……って、外、真っ暗じゃんっ!!」