世界で一番、ずるい恋。
そんな私の攻撃に無言で二度腕をさすると、その後は何事もなかったように鍵を閉めて、職員室へと足を進める。
まだいまいち掴めないんだよなぁ、と思いながら私も後に続く。
図書室は校舎の端にあるから、職員室は無駄に遠い。
太陽も沈んでしまって廊下は暗くて気味が悪い。
時間も時間だから運動部の練習も終わってるのか、静かなのが更に不気味さに拍車をかける。
窓に目を向けると、千堂くんの金髪だけがボンヤリと浮かび、その存在を示している。
やっぱり派手だけど、綺麗な色だよな……。
儚くて、触れたら消えそう。
いや、きっと手を伸ばしても、届かないんだと思う。
「阿波、怖いのか?」
足音が止んで、視線を窓から前を歩いている背中へと向ける。
静かな私を不審に思ったのか、不意にそんなことを聞かれた。
……私の姿なんて見えないはずなのに、どうしてバレちゃったんだろう。