世界で一番、ずるい恋。
そしてそのまま振り返った彼は瞳を細め、いたずらに口角をあげてみせた。
バカにされてるって分かってるし、他の男子がしたら一発ぐらい殴ってやるのに。
綺麗な彼の顔を傷付けることは罪な気がして、私は恨みを込めた目で睨んだ。
すると、一瞬目を見開いて千堂くんは、顔を背け再び前を向いて歩き始める。
よし、勝ったと私はよく分からない喜びに満ちて思わず小さなガッツポーズが飛び出した。
「あぁ、そうだ阿波」
静かな廊下に千堂くんの声が響く。
「男と二人なのに寝るって、お前どんな神経してんだ?」
「はい?」
何だか千堂くんの言うことは唐突で驚かされるばかりだ。
どういう意味なんだろう、これは。
千堂くん見た目に反して真面目だし、委員の仕事をサボったことについて言われてるのかな?
それとも、あんな長時間一人で暇だったてこと?
「襲われるかも、とか警戒心持てってことだよ、バカ」