世界で一番、ずるい恋。
「千堂くんってイメージとはかなり違うんだね」
教室に辿りつくと、陽果は自分の席である私の隣に座ってそう言った。
その穏やかな表情に、誤解されがちな千堂くんが少し理解してもらえたみたいで少し安心して、嬉しかった。
彼はただ見た目が少し怖くて、若干口が悪いだけで、後は普通の男子高校生だ。
「まさか、あの千堂くんが茜と挨拶を交わす仲だとは……。しかも笑ったし!あんた、どんな関係よ?」
途端に輝いた瞳を見て、ああ……と溜め息が出そうになる。
陽果の何でも恋ばなに繋げたがる厄介なスイッチが入っちゃったかな??
「……図書委員ですが」
「三年間ずっと同じ委員なのに?」
私の反応が気に入らなかった陽果は明らかに興奮が冷めたようで、低い声が返ってきた。
「最近、やっと話すようになったけど、まだ友達ってほどじゃないかな?」
私がそう付け足し終わる頃には、陽果はもう頭を抱えていた。
え、なに、そこまで?
私と千堂くんに何もないことが、そんなに残念だった?
「陽果、どうしたのーー」
「茜ちゃん、陽果ちゃん、おはよう!」