世界で一番、ずるい恋。




やっぱり困るよね。

迷惑に思うに決まってるよね。


ーー数学を教えて欲しい。

なんて、半分嘘で半分本当。


ただ先生と話す、先生と一緒にいる理由が欲しいだけ。

それを知ったら、きっと先生は悲しむよね?




「右?ほんとに右か?絶対に絶対に?」

「はい、右です」



何故か何回も確認してくる先生。

……いや、この中に何が入ってるんですか。


それも分からないのに、右か左かって聞かれても正直困る。




「じゃーん!」




自ら効果音を付けながら、開いた右手。

その中にあった物が目に映ると、思わず笑みがこぼれた。





「苺ミルクって可愛い…っ」




ニヤけそうになる口元を手で覆う。

いや、もう手遅れかもしれない。


だけど、無理だよ。

こんなの、反則だよ。



先生の手の中にあったのは、一粒のキャンディー。

包装紙に苺が描かれていて、小さい頃よく食べていた。


先生、これ好きなんだ。

学校に持って来ちゃうくらい好きなんだって思うと、可愛くて仕方がない。








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