世界で一番、ずるい恋。
「阿波苺ミルクをバカにしたな〜?」
「してませんよ、本当に」
先生の右手に可愛らしく佇むキャンディーを摘んで、ポケットにしまう。
先生には悪いけど、もったいなくて、食べられる気がしない。
だって先生からのプレゼントだもん。
初めての、もしかしたら、最後かもしれないプレゼント。
……私が、先生に恋した証拠のようなもの。
先生、私嬉しいんです。
先生について知ってることが少しずつ増えていることが、幸せでたまらない。
笑ったのはね?
素直に先生のことを愛しいと思えたから。
伝えられない想いが、秘めた恋心が、私の笑顔を作り出していく。
だけどね、それはまだ先生は知らなくていい。
私一人の宝物にしておきます。
「そんなのはいいから、早く数学準備室に行きません?」
「ああ、そうだな」
ーー数学準備室。
口にするだけで、胸がドキンと音を立てた。