世界で一番、ずるい恋。
「俺はーー」
「言わないでくださいっ!」
お願いだから、言わないでください。
終わらせないで、好きと伝える前に。
否定しないで、好きと伝える前に。
まだ、想わせてください。
私、まだ何も頑張れてないんです。
これからやっと頑張ろうって動き出せたのに、道を塞がないで。
希望を、望みを僅かでも、ほんの1%でも私に残してください。
「私、今日は帰ります。ほんとは用事が出来ちゃって、そ…それを伝えに来たんです」
震えるな、声。
込み上げるな、溜まるな、涙。
「だから、これで失礼しますね。……忙しいなか、教えてくださるって言うのに勝手で…すみません」
お願い、私の嘘を見抜かないでください。
見抜いたとしても、気付かないフリをしてください。
26歳の、大人な先生ならそれくらい出来るでしょ……?
グッと唇を噛み締めて私は準備室を飛び出した。
「阿波……っ!」
先生の声に振り返らないなんて、初めてだった。