世界で一番、ずるい恋。




突然、背後から聞こえた声に驚き振り返る。



どうして、ここにいるの……?

図書室にいるって言ってたじゃん。




どうして……今、私の前に現れるの?

会わせる顔がなくて、わざわざ図書室には行かなかったのに。


まだ現実を受け止めたくない私は慰められることが怖かった。

優しさに触れたら、現実だって思い知らされると思ったから嫌だったのに。





「千堂……くんっ」





口から出た声が掠れた。


何でだろう。

胸がギュッと締め付けられるように痛い。




「……だから、そんな泣きそうな顔するなよ」





目の前の千堂くんの姿が霞む。


あれ…何でだろう。

さっきまで全然こんなこと無かったのに。





「……千、堂くんっ」

「どうした?」







苦しい、苦しいよ。

鼻の奥がツンとして目頭が熱くなって。


千堂くんとは思えないほどの優しい声と小さい子を宥める様な表情が私の感情を酷く揺さぶる。






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