リミットラブ
どうして突然くるのだろう。
通り雨のように、恋も突然やってくるのだ。
疲れた足を動かし、家へと急ぐ。
別に急ぐ理由はないのだけど、なんだか自分でも謎だ。
長い髪を一つに結っていたゴムを外し、髪の毛を解放する。
「疲れた…」
この旅行会社に勤めて、一年以上が経過した。
仕事をするのは、あまり苦にならない。
むしろ仕事をしている時の方が楽だ。
一人になると、寂しくなるから。
人肌を求めているわけではない。
あたしには興味がない。
学生時代から何度か告白はされたけど、全て断ってきた。
要らないもの、そんなもの。
そんなことを考えていたら、いつの間にか家に着いていた。
フィリピンでは見慣れたヴィレッジという形式の家。
ヴィレッジの入り口には門があり、ガードマンが警備していて、関係のない人間は入れないようになっている。
ここは両親が住む家だ。あたしは少し離れたところで一人暮らしをしている。
けれど夕食は大体、実家で食べているのだ。
「ただいま…」
玄関の扉を開けて、黒いピンヒールを脱ぎ捨てる。
「…疲れた…もうあの部長本当に嫌…」
小さく愚痴を溢しながら、リビングに向かうと、リビングに置いてあるテレビに話題のニュースの速報が映っていた。