リミットラブ
「なによ、それ?」
あたしは父の話に気になってしまったのか、もう一度ソファーに座る。
父は視線を下に向けて、口を開いていく。
「父さんの大使館時代に同僚だった友人の息子が今こっちに来ててな。その息子が明日ここに来るんだ」
状況を説明した父。
聞き終わったあたしの感想は『なんだ、あたしには関係ないじゃない』と思った。
お父さんの知り合いでしょ?
あたしには関係ないわよ。
「ふーん。そうなんだ」
「それで…明菜…」
父が何かを言い出したころには、もう違うことに集中をしていた。
それは今日の夕飯。
カレーの匂いが食欲を誘い、あたしは体を動かしていた。
「ご飯出来たから食べなさい、明菜」
笑顔の母が目の前にツナカレーを差し出す。
それに目を輝かせるあたしは、スプーンを持って一口、口の中に含んだ。
やっぱりお母さんのツナカレーは大好き。
その頃、父があたしの背中を悲しそうに見つめていたことなど、当然知るわけもない。