不純に愛して 素直に抱かれて

Side women



ズルイ、なんて言葉じゃ本当は物足りない。

泣いて、喚いて、暴れて、ぶん殴って。そして全部ぶちまけてやりたい。
会社中に。彼の奥さんと子供に。

けれどかろうじてそれをしない理性を保っていられるのは、私を抱く彼の手が暖かいから。
ただ、それだけの理由。

馬鹿みたいな淋しい理由。
けど、26年間の人生で初めて知ったそのぬくもりは、今の私のすべてと引き換えにしても惜しくない。


『果乃子は可愛いね』

ただその一言を私にくれた人が今までいただろうか。それがこんなにも胸を焦がすなんて、誰が教えてくれただろうか。


真面目さしか取り柄のない私を、ちっぽけなプライドで気を張って生きてきた私を、可愛いと撫でてくれたあの手に縋って生きていく事は。

悪い事なんだろうか。




< 2 / 7 >

この作品をシェア

pagetop