それでも、課長が好きなんです!
頭を抱えながらシンとした空気にはっと我に返るとぱちっと真正面から柏木佑輔と目が合った。
二度、三度と瞬きを繰り返しながらじっとわたしを見ると瞳を伏せ大きく口を横に広げて笑った。
そのはじけるような明るい笑顔がテレビや雑誌で見るような作られた笑顔でも、演技で見せるような笑顔でもないような気がした。
テレビで良く見て知っている人物なのに、はじめて会った人のような……
「千明の百面相って、それ作戦?考えてることが全部表情に出てすごい速さで変わるんだけど」
「ほ、ほっといてください!」
「やば……超可愛いー!」
「えっ……えぇ!?」
か、可愛いって。
爆笑しながらだけど……可愛いって!?
男の人から可愛いなんて言われるの……何年ぶりかな。
思わず指を折って数えてしまう。
そんな姿もまたツボにはまってしまったのか、指を指されて笑われる始末。
一瞬喜んだけれど……ただ笑われているだけ?
「……はぁ~笑った。なんか千明ってアニメのキャラクターみたい」
ついにはアニメキャラ扱い……。
もう好きにして。
弁当のフタを開けると、柏木佑輔も再びカップ麺を口にする。
互いに食べ終わる頃時計の針は午後十時をまわっていた。
「ごちそうさま」と言って箸を置けばこの間のようにすぐに帰ると思った。
たしか同じマンションの五階に住んでるんだっけ?
「千明、テレビつけてよ」
言いながらキョロキョロとテレビのリモコンを探している。
まさかくつろぐつもり!?
「あ、あの!?帰らないんですか?」
「えー?だってまだ十時だよ?」
「いや、もう十時ですし……時間も、遅いんで……」
テーブルに肘をつき頬づえをつくと視線だけをこちらへと向けた。
びくりと肩を震わした。
今まで普通に目を合わせて会話をしていたけど……真顔で涼しい視線を浴びせられると急に緊張してしまう。
思わず息を飲む綺麗な瞳は、会話や表情を見せる時は男らしく力強く輝くけれど、表情を失くすとどこか儚さを感じさせる美しさだ。
やだ、なんで?僅かに身体が震える。
「もしかして、このあと何かあるとでも?」
「いえ、用事はないんですけど……」
「違うよ!俺と、千明との間にだよ」
「……なっ、何言ってるんですか!?」
慌てふためくわたしの反応にニヤリと笑うと「心配すんなって、何にもしねーよ」と言って溜息を吐いた。
「俺、彼女いるし?」
サラリと恐ろしいことを言う。
これが芸能人の、モテ男の常識?
「彼女がいるならなおさら……よくないです。帰ってください」
「どうして?」
「どうしてって……。自分の彼氏がこんな遅い時間に別の女の部屋にいたら嫌ですよ、誰だって!」
「ただ会話して、飯食って、くつろいで……たったこれだけで浮気になんの?」
「浮気!?」
浮気がどうとかの話ではない。
わたしは一般論を語っているんだ。
浮気って話しになるとまた話しが変わってくる気が……
「なぁ、これって浮気?」
「う、浮気……と言われればそこまではいかない気が……」
「じゃあ千明の中ではどこからが浮気?」
「……はい?」
話しが変わってきた気がする。
でもとりあえずと、まずは質問に答えることにする。
「まぁ……間違いなく寝たら浮気だと思いますけど」
「じゃあ、キスはいいんだ」
一瞬だった。
友達や村雨さんが言う右目の泣きぼくろが至近距離で視界に入った。
女装した柏木佑輔とはじめて会った時と同じ。
伸びた前髪の隙間から気の強そうな瞳がじっとわたしを見据え目を合わせれば、伏せ細めた瞳に鋭さが増す。
そしてわたしは息を飲みその迫力に圧倒され息が止まる。
腕を軽く引かれた時、わたしの思考回路は完全に働きを失っていた。
声を出すことも、抵抗することも出来なかった。
唇が触れ合っていることに気がついたのは数秒も後のことだった。
わたしまだ言っていないだけで、キスも浮気に入ると思うよ……?
発言が遅かった、わたしが悪いの?
そんな馬鹿な!
二度、三度と瞬きを繰り返しながらじっとわたしを見ると瞳を伏せ大きく口を横に広げて笑った。
そのはじけるような明るい笑顔がテレビや雑誌で見るような作られた笑顔でも、演技で見せるような笑顔でもないような気がした。
テレビで良く見て知っている人物なのに、はじめて会った人のような……
「千明の百面相って、それ作戦?考えてることが全部表情に出てすごい速さで変わるんだけど」
「ほ、ほっといてください!」
「やば……超可愛いー!」
「えっ……えぇ!?」
か、可愛いって。
爆笑しながらだけど……可愛いって!?
男の人から可愛いなんて言われるの……何年ぶりかな。
思わず指を折って数えてしまう。
そんな姿もまたツボにはまってしまったのか、指を指されて笑われる始末。
一瞬喜んだけれど……ただ笑われているだけ?
「……はぁ~笑った。なんか千明ってアニメのキャラクターみたい」
ついにはアニメキャラ扱い……。
もう好きにして。
弁当のフタを開けると、柏木佑輔も再びカップ麺を口にする。
互いに食べ終わる頃時計の針は午後十時をまわっていた。
「ごちそうさま」と言って箸を置けばこの間のようにすぐに帰ると思った。
たしか同じマンションの五階に住んでるんだっけ?
「千明、テレビつけてよ」
言いながらキョロキョロとテレビのリモコンを探している。
まさかくつろぐつもり!?
「あ、あの!?帰らないんですか?」
「えー?だってまだ十時だよ?」
「いや、もう十時ですし……時間も、遅いんで……」
テーブルに肘をつき頬づえをつくと視線だけをこちらへと向けた。
びくりと肩を震わした。
今まで普通に目を合わせて会話をしていたけど……真顔で涼しい視線を浴びせられると急に緊張してしまう。
思わず息を飲む綺麗な瞳は、会話や表情を見せる時は男らしく力強く輝くけれど、表情を失くすとどこか儚さを感じさせる美しさだ。
やだ、なんで?僅かに身体が震える。
「もしかして、このあと何かあるとでも?」
「いえ、用事はないんですけど……」
「違うよ!俺と、千明との間にだよ」
「……なっ、何言ってるんですか!?」
慌てふためくわたしの反応にニヤリと笑うと「心配すんなって、何にもしねーよ」と言って溜息を吐いた。
「俺、彼女いるし?」
サラリと恐ろしいことを言う。
これが芸能人の、モテ男の常識?
「彼女がいるならなおさら……よくないです。帰ってください」
「どうして?」
「どうしてって……。自分の彼氏がこんな遅い時間に別の女の部屋にいたら嫌ですよ、誰だって!」
「ただ会話して、飯食って、くつろいで……たったこれだけで浮気になんの?」
「浮気!?」
浮気がどうとかの話ではない。
わたしは一般論を語っているんだ。
浮気って話しになるとまた話しが変わってくる気が……
「なぁ、これって浮気?」
「う、浮気……と言われればそこまではいかない気が……」
「じゃあ千明の中ではどこからが浮気?」
「……はい?」
話しが変わってきた気がする。
でもとりあえずと、まずは質問に答えることにする。
「まぁ……間違いなく寝たら浮気だと思いますけど」
「じゃあ、キスはいいんだ」
一瞬だった。
友達や村雨さんが言う右目の泣きぼくろが至近距離で視界に入った。
女装した柏木佑輔とはじめて会った時と同じ。
伸びた前髪の隙間から気の強そうな瞳がじっとわたしを見据え目を合わせれば、伏せ細めた瞳に鋭さが増す。
そしてわたしは息を飲みその迫力に圧倒され息が止まる。
腕を軽く引かれた時、わたしの思考回路は完全に働きを失っていた。
声を出すことも、抵抗することも出来なかった。
唇が触れ合っていることに気がついたのは数秒も後のことだった。
わたしまだ言っていないだけで、キスも浮気に入ると思うよ……?
発言が遅かった、わたしが悪いの?
そんな馬鹿な!