それでも、課長が好きなんです!
いつもより帰宅が早かった日の夜。
久々に時間をかけ一汁一菜、栄養バランスを考えた食事を自炊してテレビを観賞しながら一人きりの夕食を食べていた。頭の片隅に今日の穂積さんとのことを思い出しながら。
ちょうどその時だった。自宅のインターホンが鳴る音がして、モニターを確認するまでもなく誰が鳴らしているのかはすぐに分かった。
午後九時をまわったこんな遅い時間に、宅急便も急な来訪者も来ないもの。
ドアスコープを覗くと、サングラスとマスクで怪しげな変装をした人物が立っていた。
普通の人は、変装して他人の部屋を訪れたりしないよね。
帰ってもらおうとドアの鍵に手をかけた時だった。
『もしかして……穂積さんの、お知り合い……ですか?』
『ホヅミさん?いや、全く』
ふと、いつかした、佑輔君との会話を思い出した。
わたしは軽く頭を振りドアをあけ顔を半分だけ覗かせた。
「何の、用ですか」
「今帰ってきたんだ。寄ってみた」
「寄り道なんてせずに、まっすぐ自分のお家に帰って下さいよ。わたし今ご飯食べてるんですけど」
「あ、俺今日もう食ってきたからいらない」
「聞いてませんし、あなたの分用意してませんけど……?」
穂積さんが綾川京子と知り合いだったとしたら……血の繋がりはないと言えど綾川京子と親子である佑輔君が穂積さんのことを知っていたり……なんてこと、ありえる?
佑輔君はマスクをずらし表情を見せると手に持つビニール袋をかざした。
「コレ今日現場でもらったんだ」
「……そ、それは!平日でも一時間以上並ばないと買えないという駅前に出来たばかりのドーナツ屋の!」
「あげようか?」
「じゃ、じゃあ一個だけ」
両手を差し出すと「千明と一緒に食おうと思って」と目の前で極上の営業スマイルを見せられズキュンと胸を射抜かれる。
変装をしていてもこの威力。
恐い、恐いよ芸能人。
急にドアを引かれ自分はその勢いで外に放り出され、「お邪魔しまーす」とご機嫌な様子の佑輔君は部屋の中へ。
今日も……負けた。
久々に時間をかけ一汁一菜、栄養バランスを考えた食事を自炊してテレビを観賞しながら一人きりの夕食を食べていた。頭の片隅に今日の穂積さんとのことを思い出しながら。
ちょうどその時だった。自宅のインターホンが鳴る音がして、モニターを確認するまでもなく誰が鳴らしているのかはすぐに分かった。
午後九時をまわったこんな遅い時間に、宅急便も急な来訪者も来ないもの。
ドアスコープを覗くと、サングラスとマスクで怪しげな変装をした人物が立っていた。
普通の人は、変装して他人の部屋を訪れたりしないよね。
帰ってもらおうとドアの鍵に手をかけた時だった。
『もしかして……穂積さんの、お知り合い……ですか?』
『ホヅミさん?いや、全く』
ふと、いつかした、佑輔君との会話を思い出した。
わたしは軽く頭を振りドアをあけ顔を半分だけ覗かせた。
「何の、用ですか」
「今帰ってきたんだ。寄ってみた」
「寄り道なんてせずに、まっすぐ自分のお家に帰って下さいよ。わたし今ご飯食べてるんですけど」
「あ、俺今日もう食ってきたからいらない」
「聞いてませんし、あなたの分用意してませんけど……?」
穂積さんが綾川京子と知り合いだったとしたら……血の繋がりはないと言えど綾川京子と親子である佑輔君が穂積さんのことを知っていたり……なんてこと、ありえる?
佑輔君はマスクをずらし表情を見せると手に持つビニール袋をかざした。
「コレ今日現場でもらったんだ」
「……そ、それは!平日でも一時間以上並ばないと買えないという駅前に出来たばかりのドーナツ屋の!」
「あげようか?」
「じゃ、じゃあ一個だけ」
両手を差し出すと「千明と一緒に食おうと思って」と目の前で極上の営業スマイルを見せられズキュンと胸を射抜かれる。
変装をしていてもこの威力。
恐い、恐いよ芸能人。
急にドアを引かれ自分はその勢いで外に放り出され、「お邪魔しまーす」とご機嫌な様子の佑輔君は部屋の中へ。
今日も……負けた。