それでも、課長が好きなんです!
第14話 戸惑い
いきなりの破局の告白に、正直戸惑った。
彼女の存在は知っていたけれど、佑輔君の恋の話しなど今まで本人の口から一度だって聞いたことがなかったから。
おそらく、先ほど目の前で佑輔君に平手打ちをくらわせ走り去っていった人物が、彼女だったということか。
殴られるなんて、一体何をしたのだろう。
かける言葉が見つからず、ただ佑輔君の言葉を待った。
「東京(こっち)に出てくる前から付き合ってて、もう十年以上にもなるんだけど」
「じゅ、十年!?」
あまりの長さに思わず声が出た。
長年付き合っている彼女がいるとテレビで語っていたのは、本当だったんだ。
「でもお互いに忙しくて三年は会ってなかったし、連絡も……一年はしてなかったかも」
会わない期間三年、音信不通一年。
再び声に出そうになったが、ぐっとこらえた。
だって、自分の常識の中では信じられなかったんだ。
一年も連絡を取っていなくて恋人同士だなんて。
「子供の頃から親が別居してて、俺は母親と地方で生活してたんだ。その時から付き合ってた」
柏木佑輔の出身地は……どこだったかな。
綾川京子と父親の再婚はまだほんの数年前だった気がする。
ということは、彼の両親の愛はとおの昔に冷めていたんだ。
なんだか、切ないな。
「まだ十代の頃親父に会いにこっちに出てきてる時にスカウトされて、デビューが決まって俺は上京して遠距離になった」
「それじゃあ……なかなか会えないですよね」
「でも平気だった、会えないことくらい。でも五年くらいしたら彼女が就職してこっちに出てきて」
五年も遠距離か……とても自分には真似できないと思った。
「会える時間は増えたけど結局、互いに忙しくなると会わなくなった」
「あのう……」
「なに?」
「五年とか、三年会わないとか……一年音信不通とか。平気、なんですか……? よくそれで……」
十年も続いたな、って。
そう思ってしまった。
佑輔君は「まったく一回も会わなかったわけじゃないよ」と言って笑った。
でもそれでも、ほとんど会わなかったも同然なんでしょ?
「好きだったし。他の女に目がいかないくらいに」
「……はぁ」
「会わなくても、連絡を取らなくても、自分の気持ちは変わるはずがないって自信があった。向こうも同じ気持ちだったと思う」
十年という月日が二人の絆を深めたのか、それとも二人にしか分からない何か特別な想い、出来事があったのか。
それはわたしには分からないけど、そこまで固く繋がった二人がどうして今になって別れてしまったの?
「自信もあった。変わらないって思ってた……思ってたんだけどな」
佑輔君は遠くを見つめたまま、手に持った缶ビールを一口だけ口に運んだ。
そしてゆっくりと視線をこちらへと下げた。
「人の心って、なんて簡単なんだろう。……簡単に、移り変わるんだ。はじめてだよ」
「……は?」
見下ろされているせいか、その視線に力強い鋭さを感じて身を固くした。
長めの前髪から覗く瞳から目が逸らせなくなる。
彼女の存在は知っていたけれど、佑輔君の恋の話しなど今まで本人の口から一度だって聞いたことがなかったから。
おそらく、先ほど目の前で佑輔君に平手打ちをくらわせ走り去っていった人物が、彼女だったということか。
殴られるなんて、一体何をしたのだろう。
かける言葉が見つからず、ただ佑輔君の言葉を待った。
「東京(こっち)に出てくる前から付き合ってて、もう十年以上にもなるんだけど」
「じゅ、十年!?」
あまりの長さに思わず声が出た。
長年付き合っている彼女がいるとテレビで語っていたのは、本当だったんだ。
「でもお互いに忙しくて三年は会ってなかったし、連絡も……一年はしてなかったかも」
会わない期間三年、音信不通一年。
再び声に出そうになったが、ぐっとこらえた。
だって、自分の常識の中では信じられなかったんだ。
一年も連絡を取っていなくて恋人同士だなんて。
「子供の頃から親が別居してて、俺は母親と地方で生活してたんだ。その時から付き合ってた」
柏木佑輔の出身地は……どこだったかな。
綾川京子と父親の再婚はまだほんの数年前だった気がする。
ということは、彼の両親の愛はとおの昔に冷めていたんだ。
なんだか、切ないな。
「まだ十代の頃親父に会いにこっちに出てきてる時にスカウトされて、デビューが決まって俺は上京して遠距離になった」
「それじゃあ……なかなか会えないですよね」
「でも平気だった、会えないことくらい。でも五年くらいしたら彼女が就職してこっちに出てきて」
五年も遠距離か……とても自分には真似できないと思った。
「会える時間は増えたけど結局、互いに忙しくなると会わなくなった」
「あのう……」
「なに?」
「五年とか、三年会わないとか……一年音信不通とか。平気、なんですか……? よくそれで……」
十年も続いたな、って。
そう思ってしまった。
佑輔君は「まったく一回も会わなかったわけじゃないよ」と言って笑った。
でもそれでも、ほとんど会わなかったも同然なんでしょ?
「好きだったし。他の女に目がいかないくらいに」
「……はぁ」
「会わなくても、連絡を取らなくても、自分の気持ちは変わるはずがないって自信があった。向こうも同じ気持ちだったと思う」
十年という月日が二人の絆を深めたのか、それとも二人にしか分からない何か特別な想い、出来事があったのか。
それはわたしには分からないけど、そこまで固く繋がった二人がどうして今になって別れてしまったの?
「自信もあった。変わらないって思ってた……思ってたんだけどな」
佑輔君は遠くを見つめたまま、手に持った缶ビールを一口だけ口に運んだ。
そしてゆっくりと視線をこちらへと下げた。
「人の心って、なんて簡単なんだろう。……簡単に、移り変わるんだ。はじめてだよ」
「……は?」
見下ろされているせいか、その視線に力強い鋭さを感じて身を固くした。
長めの前髪から覗く瞳から目が逸らせなくなる。