それでも、課長が好きなんです!
手を引かれるまま、マンションの玄関口まで行く。
「部屋番号は?」
「えっ、呼び出すんですか!?」
「じゃなきゃ、中に入れないだろ?」
「……」
ロックがかかり玄関横に設置されたインターホンの前で立ち尽くす。
えっと……部屋番号?
たしか四階の一番角部屋だったから、401号室?
いや、角だからと言って下一桁が一とは限らない。
……でも、このマンション四階は何号室まであるのかな。
ボタンを前に人差し指を出しながら固まってしまった。
「早くしてくんない?」
「わ、わからない……」
「はぁ!? ちっとも?」
「たぶん……四階の……」
「取り敢えず、これかなって思う番号押してみろよ」
「な、何言ってるんですか! こんな時間に間違えたら迷惑……」
「いい、じゃあ俺が押す。四階の何号室?」
「だ、だから……!」
自信がないんだってば!
あぁ、もうどうしよう!?
何がなんでも中に入ろうとする佑輔君の横で慌てふためいていると、背後から近づく足音が止まった。
ここの住人だろう。
玄関先で騒いで、迷惑だし邪魔だよね。
場所を譲ろうと一歩下がり、振り返ると小さく「すみません」と言い頭を下げた。
「どういう、組み合わせだ……」
聞き覚えのある声だったが、その声は今までに聞いたことがないほどに驚きに満ちていた。
「……ぁっ」
僅かな動揺さえも表情を見てとれた。
目を見開き、わたしと佑輔君を交互に見ている。
今会社から帰宅したであろう穂積さんが、スーツにコート姿で現れた。
肩に佑輔君の手が乗り「じゃあね」と言うと、穂積さんと目を合わせることも、一言も会話をすることもなく去って行った。
取り残され去りゆく佑輔君の背中を見つめていると、正面からの視線を感じて恐る恐る視線を上げた。
でも視線を感じたのは気のせいで、目は合うことなく宙を浮いた。
感情の読めない瞳はこちらに向けられているけれど、わたしをその瞳には映していない。
行き場のない視線を泳がせながらまた、何かいい言い訳はないかと考えていた。
何か、ここに来たといういい理由が……
やっぱり、本当のことを聞くことなんて出来ないよ……
あまりの寒さに感覚のなくなった手をぎゅっと握りしめた時だった。
「寒いだろう、中に入るか」
「……」
一言も言葉を発せずにいると、ロックの解除音が耳に響き扉が開いた。
「話なら、中でしよう」
ゆっくりと声のする方へ身体を向けると、開いた扉を手で押さえこちらをじっと見ている穂積さんがいる。
その表情は見覚えのある、少し怒りを秘めたような表情だ。
「トロい! さっさとしないか」
「はっ……はい!」
慌てて駆け寄ると、穂積さんから小さく吹き出したような音が聞こえた。
すぐに背を向けてしまったから分からないけど……気のせいかな?
「部屋番号は?」
「えっ、呼び出すんですか!?」
「じゃなきゃ、中に入れないだろ?」
「……」
ロックがかかり玄関横に設置されたインターホンの前で立ち尽くす。
えっと……部屋番号?
たしか四階の一番角部屋だったから、401号室?
いや、角だからと言って下一桁が一とは限らない。
……でも、このマンション四階は何号室まであるのかな。
ボタンを前に人差し指を出しながら固まってしまった。
「早くしてくんない?」
「わ、わからない……」
「はぁ!? ちっとも?」
「たぶん……四階の……」
「取り敢えず、これかなって思う番号押してみろよ」
「な、何言ってるんですか! こんな時間に間違えたら迷惑……」
「いい、じゃあ俺が押す。四階の何号室?」
「だ、だから……!」
自信がないんだってば!
あぁ、もうどうしよう!?
何がなんでも中に入ろうとする佑輔君の横で慌てふためいていると、背後から近づく足音が止まった。
ここの住人だろう。
玄関先で騒いで、迷惑だし邪魔だよね。
場所を譲ろうと一歩下がり、振り返ると小さく「すみません」と言い頭を下げた。
「どういう、組み合わせだ……」
聞き覚えのある声だったが、その声は今までに聞いたことがないほどに驚きに満ちていた。
「……ぁっ」
僅かな動揺さえも表情を見てとれた。
目を見開き、わたしと佑輔君を交互に見ている。
今会社から帰宅したであろう穂積さんが、スーツにコート姿で現れた。
肩に佑輔君の手が乗り「じゃあね」と言うと、穂積さんと目を合わせることも、一言も会話をすることもなく去って行った。
取り残され去りゆく佑輔君の背中を見つめていると、正面からの視線を感じて恐る恐る視線を上げた。
でも視線を感じたのは気のせいで、目は合うことなく宙を浮いた。
感情の読めない瞳はこちらに向けられているけれど、わたしをその瞳には映していない。
行き場のない視線を泳がせながらまた、何かいい言い訳はないかと考えていた。
何か、ここに来たといういい理由が……
やっぱり、本当のことを聞くことなんて出来ないよ……
あまりの寒さに感覚のなくなった手をぎゅっと握りしめた時だった。
「寒いだろう、中に入るか」
「……」
一言も言葉を発せずにいると、ロックの解除音が耳に響き扉が開いた。
「話なら、中でしよう」
ゆっくりと声のする方へ身体を向けると、開いた扉を手で押さえこちらをじっと見ている穂積さんがいる。
その表情は見覚えのある、少し怒りを秘めたような表情だ。
「トロい! さっさとしないか」
「はっ……はい!」
慌てて駆け寄ると、穂積さんから小さく吹き出したような音が聞こえた。
すぐに背を向けてしまったから分からないけど……気のせいかな?