それでも、課長が好きなんです!

最終話 想いのカタチ

 カーテンと窓を開けると、暖かい空気と爽やかな風が頬をかすめて気持ちがいい。
 季節は、春。
 天気が良く気持ちがいい朝を迎えられて、休日の今日、家にこもっているなんてもったいないと思った。
 早速洋服に着替え、メイクをしている途中だった。
 部屋にインターホンの音が鳴り響き、扉を開ける。

「よう、千明! 久しぶりー」
「ゆ、佑輔君!?」

 突如現れた彼は、玄関で呆然とするわたしを押しのけて、部屋の中へと入っていく。
 そんな彼のあとを追う。

「どうしたんですか? 急に」
「久々だよな。三か月ぶりくらい?」

 テーブルの上に広げたメイク道具を勝手に床に下ろし、テーブルの上に自分の持ち物をドサリと乗せる。

「……これは?」
「千明のために、千明の喜ぶ顔を想像しながら苦労して並んで手に入れた千明の大好きな……!」
「ほぉ」

 眉をひそめ、じっと佑輔君が持ってきた荷物を見る。
 ビニール製の袋の中にお菓子の入った箱が見える。箱に「柏木佑輔様」と油性ペンで書かれているのがビニールから透けて見えてるんですけど。……もらい物だな?
 わたしは一冊の雑誌を佑輔君の手土産の隣に置いた。

「これは?」
「なんだよ、週刊誌なんか買って。俺の名前が載ってたからつい買っちゃったんだ?」
「柏木佑輔、深夜のホテルで密会……」
「それは確かに俺だけど、その女性(ひと)とはなんでもないよ。おともだち。知ってるだろ? 俺が意外と誠実だってこと」
「そうでしょうか」
「好きな女と一緒にいても指一本触れず……」
「ちゅーされた」
「そうだった?」
「嘘っ、信じられない!」

 声を上げて笑う佑輔君につられて自分も自然と笑顔になる。

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