Snow Love. ~大好きなキミへ~


優くんに大好きな百合さんがいて、私が苦しい思いをしているように、私には大好きな優くんがいて、橋本くんはそれによって苦しい思いをして。


誰かを好きになるとか、誰かと付き合うとか。


そんなのは理屈でなりたってるわけじゃない。


必ず、目には見えない誰かの想いや恋心が犠牲になってるんだよね。


だからこそ、私はやっぱり泣いてたらダメなんだ。


橋本くんの想いを受け取れなかったことがどうしようもなくつらくて悲しくて、申し訳ないと思ってるけど。


だけどそれ以上に、嬉しく思う。


だってきっと私が橋本くんの立場だったら、“ごめんなさい”より、“ありがとう”の方がとっても嬉しいと思うから。


「私ね……」


自分の涙をそっと拭いながら、私は強く前を向く。


「やっぱり優くんが好き」


そして光莉ちゃんと愛花ちゃんの目をしっかり見つめながら、そう宣言した。


「ずっと考えてたの。お母さんからの“後悔のないように”っていうメッセージを見た時、私は誰が好きなんだろうって、ずっと考えてた」

「……うん」

「確かに、私の心は最近、橋本くんにもドキドキ鳴り始めてた。この人と一緒になれば幸せになれるって、そう思ったこともある。だけど、ね」


私の心臓が、ドクンドクンと音をたてる。


なんだか次の言葉を言うのが恥ずかしくなった私は、ごにょごにょと口ごもる。


「ゆっくりでいいよ」


それなのに、だまってしまった私を急かすことなく微笑んで、次の言葉を待ってくれているふたり。

< 331 / 353 >

この作品をシェア

pagetop