【完】君ノート
「じゃあ、帰るか!」
俺は床に置いていた荷物を手に取ると、花音に向かってそう言った。
花音もゆっくりと歩き出す。
「あ、花音。今日は駅まで送るよ!」
そう言うと、びっくりした顔で首をブンブンふって否定する。
花音のことだから、反対方向だから。とか気にしてるんだろう。
でも、これは俺のわがまま。
花音ともうちょっと一緒にいたいから。
そんなこと、本人には言えないけど。
だから
「いいんだ。ちょっとそっちの方に用があるから!
送らせて?」
それらしい口実を使ってみた。
すると花音は優しく微笑んで頷いてくれた。
よし、騙されてくれた。
これから、長い長い夏休みが始まるな。
そんなことを思いながら少し暑くなった季節を感じて、
花音の隣を歩いていた。