【完】君ノート
「いつの間にか、だった。ほんとに。
もしかしたら、出会った瞬間かもしれない。
恋って理屈じゃない。
私、三浦が好き」
目を閉じて想いを告げてくれた佐倉に、俺はなんて伝えよう。
俺の想いは、今……。
言葉にするには難しすぎる。
でも、伝えられる。
「佐倉……ごめ……っ」
「三浦っ!!」
俺の言葉を、佐倉は遮った。
「返事は……まだいい。
考えておいてほしい……。じゃ、また明日…。
体育祭、頑張ろうね」
とぼとぼと歩いて帰っていく佐倉を、
追いかけることなんてできなかった。
だって知ってるから。
好きな人に、好きな人がいるかもしれないって怖さを。
だから、俺も花音から逃げた。
俺と佐倉は同じだ。
相手の想いを聞かず、逃げ出した。
それを聞かなければ、自分は傷つかずに済むことになる。
でも、俺たちの中で変わるものは、なにもないよな?