【完】君ノート
「もう会ってくれないと思った。
俺は、花音にひどいことをしたから」
お父さんは、お母さんのお墓の前に来て、手を合わせる。
「……花音に声が戻って…本当に良かった……」
まるでお母さんに言うかのように、震える声でそう言ったお父さんは、すごく弱々しかった。
「私のこの声は……優しい人のおかげで戻ったの」
優くんのことは、誰にでも話せちゃう。
私の大好きな人の話だから。
だからお父さんにも言った。
「優しい人?」
お父さんは、私を見て首を傾げた。
「私を笑顔にしてくれる、神様みたいな人」
そう言うと、お父さんは笑って、
「そうか」
そうひとこと言った。