助手席にピアス
カーテンの隙間から差し込む日差しがまぶしくて目が覚めた。
あれ、ここは……?
上半身を起こして辺りを見回せば、ベッドとチェストしかないシンプルな部屋の様子が目に映った。
あっ、私、そう言えば昨日、桜田さんの胸の中で泣いたよね? それから……どうしたんだっけ? 確か……。
おぼろげな記憶をたどりながらベッドから起き上がると、部屋を出る。そして右側に見えた階段をゆっくりと下り、廊下の先に現れた見覚えのある白いドアを開けた。
「おはようございます」
すでにミキサーで生地を捏ねている桜田さんの後ろ姿に向かって、声をかける。
「ああ、おはよう。まだ眠っていてもいいんだぞ」
「いえ、大丈夫です。手伝います」
「そうか。それならまずあれを食え」
桜田さんは、作業台の上に置かれたコンビニの袋に視線を向ける。袋の中を覗き込めば、おにぎりが二個とペットボトルのお茶が入っていた。
「桜田さん、わざわざ私のために買ってきてくれたの?」
「お前のためじゃない。俺の朝めしのついでだ。勘違いするな」
相変わらず照れ屋な桜田さんらしい言い訳だと思いながら、パイプ椅子に腰を下ろす。