助手席にピアス
「桜田さん、ありがとう。いただきます」
「ああ」
彼が早起きをしてコンビニで朝食を調達している姿を想像したら、心が温かい気持ちに包まれた。でもそれは、ほんの一瞬のこと。
「まさか寝落ちするとはな……」
桜田さんの一言を聞いたら、ほんわか気分も一気に吹き飛ぶ。
やっぱり……。私、昨日、桜田さんの胸の中で泣いて、そのまま寝ちゃったんだ……。
「もしかして、私を寝室に運んでくれたのって……」
おにぎりをゴクリと飲み込んで恐る恐る尋ねると、桜田さんはあきれ顔を浮かべた。
「俺の他に誰がいるんだよ。二階までお前を運ぶって、どんな罰ゲームだよ……」
容赦ない桜田さんの言葉を聞いたら、申し訳ない気持ちが膨らむ。
「迷惑かけて、すみませんでした」
必死に謝る私の耳に聞こえてきたのは、クククッという低い笑い声だった。
「冗談だ。甘えられるのは嫌いじゃない」
「……」
意地悪な発言から一転、桜田さんの不意打ちの本音は、私の心を簡単に揺さぶる。
返事をすることもできない私はドキドキと胸を高鳴らせながら、おにぎりを頬張った。