助手席にピアス

午後五時に、最後のブッシュノエルの引換を終えると「はぁ」と大きな声を出しパイプ椅子に座り込んだ。三日間の手伝いは、想像していたよりもハードなもので、一度腰を下ろしてしまうと、なかなか立ち上がることができない。

そんな疲れ切った私の前に、コーヒーが注がれた赤いマグカップがコトンと音を立てて置かれた。

「桜田さん、これって?」

「お前専用のカップだ」

桜田さんは不愛想にそう言った。

「もしかして、わざわざ買ってくれたとか?」

「毎回、紙コップじゃ資源のムダだからな。それからこれも。ほら食え」

桜田さんが冷蔵庫から取り出したのは、白いお皿に乗ったザッハトルテ。上にはメリークリスマスと書かれたプレートが乗っている。

「こんなモノしか用意できなかったが、俺からのクリスマスプレゼントだ」

「……!!」

真っ赤なマグカップを買ったのは、いつなのか、忙しい作業の合間に、いつザッハトルテを作ったのか、聞きたいことはたくさんあった。けれどうれし涙が邪魔をして、どの質問も声にすることができなかった。

「本当にお前は泣き虫だな。ほら、泣いてないで食え」

あきれ気味にそう言った桜田さんは、私の頬に伝う涙を優しく拭うとフォークを差し出す。

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