助手席にピアス

桜田さんに連れて来られたのは、キラキラと光り輝く夜景が綺麗に見下ろせるホテル・グランディオのビュッフェレストラン。週の初めの月曜日だというのに、家族連れやカップルで賑わっている。

色とりどりの料理が所狭しと並ぶ中、目の前でシェフが切り分けてくれるローストビーフを受け取った私は、そのおいしさに舌鼓を打つ。そして次はなにを食べようかなと、立ち上がった私に向かって、桜田さんは真っ白なプレートをグイッと差し出した。

「頼む。あっちにあるスイーツを片っ端から持ってきてくれ」

何故、桜田さんがスイーツにこだわるのか、その理由はもちろん、彼がパティシエだから。

定休日には人気店のケーキを買い求め、その味を確かめているらしい。探求心旺盛な桜田さんを尊敬せずにはいられなかった。

だから桜田さんためになるのなら、とケーキはもちろん、シュークリームにプリンにジュレ、タルトにマカロンなどをごっそりとプレートに乗せると、働きアリのようにせっせとテーブルに運ぶ。

桜田さんがひとりで、ビュッフェのスイーツを食べるのは恥ずかしいと言ったことは本当だと思う。でも、ホテルのスイーツを食べることだけが目的ならば、テクアウトコーナーに立ち寄ればいいはず。

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