助手席にピアス
Sweet*2

甘く、悲しく


満員電車に揺られること約三十分。息苦しい密室の箱から解放された私が向かう先は、駅から徒歩十分の距離にあるハニーフーズ株式会社。

粉類、油脂、乳製品など、製菓やパン作りには欠かせない、ありとあらゆる食材の卸会社であるハニーフーズに就職したのは、約一年半前のことだ。

地上五階建ての自社ビルのエレベーターに乗り、三階で下りると更衣室に向かう。そこで淡いブルーのブラウスと紺色のベストとスカートの制服に着替えると、同じフロアにある事務所に急いだ。

私が担当しているのは、受注事務。取引先から受注された商品を番号と照らし合わせながらパソコンに入力し、不明な点は営業さんに尋ねたり、取引先に直接電話をして確認をしながら業務を進めるのが主な仕事内容。

取り扱っている商品が数えきれないほど多いため、新人のころはミスを連発していた。でも今では去年入社してきた広川さんに、仕事を教えてあげられるくらいに成長をした。

でも、この仕事を一生続ける気はない。だって私の夢は、お嫁さんになることだから……。

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